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オタマジャクシ

 窓際でギャッギャッと雨蛙の泣き声が聞こえました。
冬眠から覚めたんでしょうね。
 今日は蛙の子、オタマジャクシの話です。

 小学校の帰り道、小さな池をのぞくと、
池の中に黒い影がありました。

 何だろうと近づいてみれば、それはオタマジャクシの大群でした。
すぐ手の届く場所でもあり、私はわくわくしてきました。
 雨蛙の子であるその黒くて小さなオタマジャクシには、
やはり小さな目が二つ見えました。

 「かわいい~」
 
 私は急いで家へ帰りました。
 
 母にただいまというとすぐに、
 「お母さん、お母さん、そこの池にね、オタマジャクシがいっぱいいたよ。――バケツ、バケツ」

 「捕ってくるつもりなの?」
 頷く私に母は困ったように、

 「捕ってくるのはいいけど、あとどうするの?」と訊きました。

 「決まってるじゃない。飼うのよ」

 「――やめてちょうだい。蛙になって庭中跳びまわられたらかなわないわ」

 蛙がちょっとだけ苦手な母は手で顔を覆ったのでした。

 そんな母のことなどお構いなしに、私は玄関の脇にある水場に置いてあったバケツを右手に池へ向かったのでした。

 池のオタマジャクシは群れの形を少し変えていましたが、前と同じ場所に群れていました。

 私はわくわくしながらバケツで黒い塊を掬いました。

 バケツには黒いオタマジャクシたちが激しく動いているのが見えました。

 私は鼻歌まじりで家へ帰ると、納屋にしまってあった水槽を引っ張り出してきて、きれいに洗い、
そこに、バケツのオタマジャクシを網ですくって移しました。

 その水槽をうんうん言いいながらベランダに飾ると、
澄んだ水の中で、ビーズのようなオタマジャクシのからだが黒光りしているのが見えました。

 私はその姿に魅入られて、眺めていました。

 ところが、しばらくすると、数匹のオタマジャクシが仲間の尻尾を突きはじめ、 そうこうしているうちに、仲間どうし突進しあい、共食いを始めたのでした。

 思いがけないオタマジャクシたちの行動に、私は驚いて、
 「何やってるの?やめなさい」
 と叫ぶのですが、オタマジャクシたちに分かろうはずがありません。

 あれよあれよという間に、オタマジャクシは三分の一ほどに数が減ってしまいました。

 半泣きの私に、母が、
 「あらあら、きっと、おうちが狭かったのね。可哀想だから、池に返してあげましょうね」
 と促したのでした。

 私は水槽のオタマジャクシをバケツに戻し、元の池へ返しにいきました。
 私が掴まえてきたりしなかったら、オタマジャクシは死ななくてすんだのにと、
自分の罪の深さに打ちひしがれました。

 池に帰ったオタマジャクシは尻尾を激しく振って、元の群れに戻っていきました。(おしまい)
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呪いの藁人形

 幼いころ、私と小学校の同級生のA子B子の三人で、
神社の裏でケンケンパをしていたときのことです。
 
 遊び疲れた私たちは、何やら漢字のいっぱい書かれた石碑の上で、休憩することにしたのでした。石碑の四隅にはおそらく細長く伸びた石碑が折れたりしないように強化のための支えがあって、
それがちょうど王座のように見えたわたしたちは、
 「わーい王女様だ」などと言って椅子代わりに腰掛けたのでした。
 裏表で椅子は二つでしたので、私とA子が一緒に表側に、
B子が裏側に腰掛けたのでした。

 私たちはしばらくの間、学校の話や家族の話などをして過ごしていました。
 突然B子が立ち上がり、裏の林へ駆けていきました。
 「ねえ、見て見てだよ」
 と手招きします。

 そこは神社の境内の林で、杉や竹が混在して茂っていました。
 石の塀がめぐらされていましたが、一部が崩れていて、
子供の私たちでも入れるくらいのスペースがあったのでした。

 私とA子が行ってみると、木立の間に日が差し込む場所が数カ所あり、
そこに赤い苺がいくつも見えました。

 苺を一つつまんで食べようとするB子に向かって、
「これ、ヘビイチゴだよ。たべられないよ」
 とA子。
「ううん。ヘビイチゴって食べられるんだよ」
「食べちゃだめだよ」

 なんとなく変な空気になってきたので、私は
「どっちでもいいいじゃない。摘んで家に持って帰ろうよ。それで、お母さんに聞いてから食べればいいいじゃない」
 と言うと、
 そうだねとA子もB子も頷いて、ヘビイチゴを摘みはじめたのでした。

 私たちはたくさん実っている赤い実に夢中になりました。
 上着の裾の上に一杯になった苺に私は満足でした。

 そして気がついたのでした。
 苺摘みに夢中になっているうちに、私たちは林の随分奥まで入っていたのでした。

 「ちょと、ちょっと、ここにお人形さんがあるよ」
 とB子が興味津々に呼びます。

 大きな杉の木の裏側にB子はいました。
 「かわいい」
 B子は小さな藁人形を撫でています。
 五寸釘で右腕をとめられたその藁人形は目も鼻も口もありませんが、
 自然現象で偶然できたものでないことは間違いありません。
 でも、どうして、こんなところに人形があるのだろうと不思議に思いました。

 それに答えてくれたのはA子でした。
 「あっ、それ、聞いたことがある。呪いの藁人形だよ」
 「何、それ?」と私が聞くと、
 「それはね、誰か嫌いな人がいたときにね、呪いをかけるための人形なんだって」

 途端、仰け反るB子と私。
 「やだ、私触っちゃった」
 B子は右の掌を見た。
 
 「人に見られると呪いがきかなくなるらしいよ」
 とさらに詳しい情報を授けてくれるA子。

 「どうしよう。呪いが私に移ったりしないのかな?」
 「そんなのわかんないよ」
 私たちは半泣き状態になりました。

 その時境内の隅で、何かが倒れるような音がして、
恐くなった私たちは摘んだ苺をその場にうち捨て、
わーと声をあげてちりぢりに逃げたのでした。

 それぞれ、家へ向かった私たちは
家人から呪いの人形のもっと詳しい話を聞くこととなります。

 次の日、B子は学校を休みました。
風邪で熱を出したとのことでした。(おしまい)

花見のお話―森尾さん

 再び花見のお話です。

 朝、外に出てみますと、近所の森尾さんが、
花見の塵の山の間をうろうろと歩いています。
なにか捜しているようす。

 そのうち目があって、挨拶をすると、
なんだか跋が悪そうに笑って応え、
そそくさと帰っていきます。

 次の日の朝もまた次の日の朝も、
私もよせばいいのに気になって外を眺めますと、
やっぱり森尾さんがいます。

 スーパーで偶然に出合ったおりに尋ねてみましたが、
ただにこやかな顔で、
 「何も、散歩です」
と答えたのでした。

 次の年の花見のころも、森尾さんは、
花見のあとの塵の山のあたりを散歩?しています。

 気になってしょうがない私は、
とうとう森尾さんを問い詰めたのでした。

 「拾ったんですよ。これ」
と言って、森尾さんは右手でお金の形をとりました。
 「えっ、お金ですか?」
 「ええ、八千円」
 「まあ、そんなに」
 「また落ちてないかと思いましてね」
 森尾さんはははと笑います。
 
 それって、もしかして、ねこばばしたってことじゃないですか。
 と言葉にはしませんでしたが、
私の顔がはっきりそう言っていました。
 
 森尾さんは何も言わずに自分の家へ入っていきました。
 疑問がとけて、すっとしたような気がしたのですが、
新たに、なにかがもやもやっとする感じです。

 しかし、八千円も落としたのんべさん、
きっとあとで冷や汗かいたことでしょう。

ホームレスよっちゃん2

 ホームレスのよっちゃんは、自ら望んでホームレスになったのですが、
じっさい、その生活は大変そうでした。

 花見の客がいなくなって、夜明け前、暁、よっちゃんは懐中電灯を持って現れます。
 塵の山から手つかずの弁当箱を探り当て、
ついでにお酒やビールも持てるだけ拾い集めてどこかへときえます。
 ときには野良犬に吠えられて逃げることもあります。

 よっちゃんはこちらでも寝ることもありましたが、
近くに本宅があるらしいのです。
それがどこにあるのかは知りませんでした。
よっちゃんは集めた弁当やお酒をそこへ持って帰っているようでした。
 缶ビールのない時代、お酒の瓶は40円、ビール瓶は5円ぐらいで、
酒屋で引き取ってくれていましたので、飲む楽しさばかりではなく、
収入源でもあったと思います。

 よっちゃんは暖かい時期、天気の良い日に、こちらで寝ていました。
ベンチの上か、サルスベリの木の下がお気に入りでした。

 気まぐれで、毎日姿を現すこともあれば、一ヶ月ほど姿を見せないこともありました。
 それが、二年ほどしたころ、全く姿を見なくなりました。

 ホームレスの人は健康を害して亡くなることもあるそうですが、
もしよっちゃんが亡くなっていれば近所で噂になっていたと思います。
 そんな話を聞きませんでしたので、それはなかったと思います。
 
 よっちゃんは別の場所へ移ったという人もいましたが、
 大半はよっちゃんはホームレスをやめたんだろうと噂したのでした。(おしまい)
 

ホームレスよっちゃん

 花見のお話第2弾。
 
 花見のころになると姿を現すホームレスのおじさんがいました。
 年の頃は四十前後くらいで、みんなからはよっちゃんと呼ばれていました。

 花見で賑わう中、よっちゃんは歩き回って、
めぼしい相手を見つけると声をかけます。、
 「社長、一杯ご馳走して」
と飲む仕草をして、両手を合わせます。

 あっちへいけと追い払われることもありますが、
 ちゃっかりご相伴にあずかることもあります。
 みているかぎりでは、成功率は高かったようでした。
 
 本当に一杯ご馳走になると席を立ち、
また別の社長をさがしにいきます。
 
 ときには意気投合して上がり込んで飲み交わすこともありました。
 そんなときのよっちゃんはとても嬉しそうでした。
 
 一張羅の服を着ていましたが、
とてもお行儀がよく、人に迷惑をかけるようなことはありませんでした。

 よっちゃんは、高学歴で、バリバリ仕事をしていたらしいいのですが、
ある日、人に使われて働くことが嫌になったそうで、
自由気ままなホームレスに、自ら望んでなったそうです。
 そう言われれば、よっちゃんはホームレスを楽しんでいるようにも見えました。(つづく)


 
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