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かーにい!

 かーにいの暖かく包み込むような優しい眼差しを思い浮かべた私は、しばしうっとりとする。

 あの笑顔は少年のころのものと変わっていない。久しぶりに見る彼は眉毛のあたりが引き締まって精悍さも備わったようだ。

 突然のあざわらうような声に、私の幸せな心地は打ち破られた。

 電柱にとまっていたカラスが、その濡れ羽色の羽を膨らませ、騒いでいるのだった。

 「――五月蝿い。あっちいけ! 」

 翔がそう叫んで、足を踏みならしたので、カラスは逃げていった。

 「もう帰ろうよ」

 「うん。でも、もう少し……だってあのブロンズ像素敵じゃない。ビーナスかしら? 」

 庭の片隅に置かれた女神像は、くすみもなく夏の陽ざしにその肌をさらしていた。

 「ああ――もう、僕本屋行きたいから、先帰る」

 「どうぞ。――ああ、そう、お母さんには、ちゃんと届け物を渡したこと、伝えといてね! 」

 「……もう、なんで僕が……」

 翔は呆れたようすでぶつぶつ言った。

 翔が帰って、あたりは急に静かになったように感じられた。遠くで蝉の泣き声が聞こえたが、耳障りではなかった。

 青々とした芝生に点々と置かれたオブジェ、女神以外にも、大きな水瓶や、石柱など目をひくものばかりだ。

 「もし、そこのお方、お庭はいかがでございます? 」

 その声はささやくような声だったが甲高かった。

 目前の右奥、煉瓦の塀に隠れて見えなかった場所に一人の女性が立っていた。女性はかるくお辞儀をした。

 髪は真っ白で、アップにしてゴールドのシニョンで丸めている。白のブラウスに紫がかった青のロングドレスを着ていた。

 「――あっ、すいません!私、その覗こうなんてきはなくって、ただ、お庭がとてもすてきだったものですから……」

 と言うと、急いでその場を逃げ去ろうとした。

 「あっ、あら、構いませんことよ。よろしければお茶をご一緒にと思っただけですから――」(つづく)

 

 
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テーマ : ホラー
ジャンル : 小説・文学

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