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ムサシの桜

 台所で高菜を切っていると、玄関で息子の声がした。お客さんらしい。

 濡れた手を手ぬぐいで拭き取って、玄関へむかう。

 玄関につづく廊下から、夕焼けを背に受けた二人の姿が見えた。背の高い方が息子で、少し低い方がお客さんだろう。眩しくて顔は見えなかったが、着物姿の男性らしい。

 「こちら、お祖父ちゃんのお知り合い」

 手で息子がお客を紹介した。

 「はあ、――おまいりでございますか? 」

 私の父は去年亡くなり、今日でちょうど一年になる。今日が命日と知って訪ねてくれたにちがいないと思った。

 「――存じ上げず、かたじけない。忠雄どのにはひとかたならぬ世話になった。墓はどちらにおありか? お教えいただきたい! 」

 客は浅黄色の着物の上に茶の袖無しの羽織をかけ、下は裾をつめたもんぺのような袴をはいている。髪は多少後退しているようで、前から中央にかけてかなり薄い。横の髪は豊富だが、散切りにしている。あまり、姿格好を気にする質ではなさそうだ。

 目だけがぎょろぎょろしていて少し恐い感じもするが、その瞳はきらきらとしていて、どこか優しげで好感をもてた。

 「お墓は少し離れた場所にございますのよ。少しお待ちいただけますか。車でご案内いたしますので……」

 「いや、いや、それには及ばぬ。歩いて参ろうて」

 「僕が案内するよ」

 息子は何かしら嬉しそうだ。

 「――お母さん、こちらはね、宮本武蔵さん、なんだよ」(つづく)

 

 
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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