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ムサシの桜

 息子の紹介に合わせてお客は会釈した。

 私は吹き出した。

 「――まあ――このこったら――おかしなことを」

 ミヤモトムサシといえば、剣豪の宮本武蔵と同姓同名ではないか、たしかに見た目は似ている。だから息子は冗談でそう言ったのかもしれない。が、それに合わせてお辞儀をするこのお客もふざけている。

 なんだか、急に緊張の糸が解けてしまった。

 「――あの、もしかして、あなたさまもファンでいらっしゃいますか? 」

 父は、晩年をこの熊本ですごした宮本武蔵に大変興味を持っていた。五輪の書などを読みあさり、幼きころより剣客として阿修羅の道を歩み、二刀流として天性の才能を持って生きた彼に、ある種憧憬の念を抱いていた。

 この客もまた宮本武蔵にあこがれているのだろう、容姿まで似せているのだ、むかし観た武蔵晩年の図に似ている。父とはきっとそういった趣味のお仲間に違いない。

 「花恵どのと同じ場所でござるか? 」

 「母と同じ墓に入っておりまする」

 つられて私も言葉が遣いが変になる。

 「ならば、行ったことがござる。あないには及びませぬ」

 お客は踵を返して歩き出した。その足運びの早いこと、老人とは思えない。

 「僕も行くから」

 息子は私に目配せをしてお客のあとを追ったが、あまりの早さに息子も小走りになっていた。

 私はといえば、まだ笑いが止まらず玄関で動けないのだった。(つづく)
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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