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ムサシの桜

 お客は四十分ほどで戻ってきた。日ははとっぷりと暮れている。

 仏間へ案内して、父の一周忌法要に出したかるかんが残っていたので、お茶に添える。

 おしぼりも出したが、客はさして汗をかいた風でもなく手を拭いただけだった。息子だけが赤い顔をして顔や首の汗を拭いた。

 「ありがとうございます。父も喜んでいることでしょう」

 「お茶をかたじけない。仏壇の方へ先にまいってからいただきましょう」

 客は仏壇の前へ行き、しばらく父の遺影を見ていたが、やがて手を合わせ、頭を垂れた。その背中が寂しげで、本当に父のことを偲んでくれているのだと思ったら涙が出そうになった。

 「花恵どのが亡くなられてからというもの、気落ちなされておったので、心配はしており申したが、まさかこんなことになっていようとは……残念でござる」

 「父はたちの悪い風邪を引き込んでしまい、あっけなく亡くなってしまいました。昨日、一周忌の法要を終えたところでございます」

 「また、一緒に話ができるのを楽しみにしておりましたがのう。それももうできませぬなあ」

 父とはかなり久しい間がらのようだが、私はこの老人とどこかであったことがあったろうかと考えてみるが、全く思い当たらないのだった。

 私が勧めたので、客は座卓へ移ってお茶に口をつけた。

 「この饅頭は美味いですよ」

 息子は客に促して、私の方を向くと、「お祖父ちゃんてほんとに凄いよね。タイムマシンで宮本武蔵さんを連れてきちゃってたんだもの」と、目を輝かせて言った。(つづく)

 

 

 
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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