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ムサシの桜

 「ねえ、折角だから花見に行こうよ!」

 息子が叫んだ。

 朝餉をすましたムサシが、食器を洗いに台所へ入っていったときのことだった。

 私はムサシの手から汚れた食器を受け取ろうと、手を伸ばしていた。

 「――そうでござるな。筍の飯を持ってまいろう!」

 ムサシがのってきたのには私も驚いた。

 台所の入り口に立っていた息子が両手の拳を握った。

 「……いきますか?……そうですね」

 私は意外な展開に緊張気味に笑って、食器を受け取った。

 「すすぎは私がいたそう!」

 「……でも」という私に気にもとめず、ムサシは腕をまくり、蛇口をひねって、手を水で洗った。

 「宮本さんは明日の夕方にならなければ帰れないんだし、思いっきり遊んじゃいましょう!」

 なぜそうなのか?私は息子の顔を見た。

 「タイムトラベルは、1回やってしまうと、時間酔いの症状が出るんだ。それを無視して連続して、タイムトラベルすると、神経がいかれちゃうらしい。実際に祖父ちゃんも、七日間ぼんやりして、お祖母ちゃんを心配させたんだよ。日誌に書いてあった」

 そうか、だから今朝ムサシは夕飯に筍を出してくれなどと、まるでもう一晩泊まるのがあたりまえのように言ったのだ。ムサシは知っていたのだ。

 私は思いがけない訪問者にとまどいながらも、あと二日、この客人とすごす覚悟をした。

 「――おいなりさんでも作るか!」

 「おお、それはありがたい。好物でござる」

 いなりは母ゆずりの甘辛味だけど、あっさりした味付けだ。どうやら、ムサシも食べたことがあるようで、作り方を覚えようとするかのように、私が作るのを熱心に見ていた。

 筍ご飯のおにぎり、いなり、高菜の漬け物、とりの唐揚げ、里芋の煮物を重箱に詰めて、私たちは花見の準備を整えた。

 「――で、どこにいくつもり? 」

 「――そりゃあ熊本城でしょう! 」

 熊本城といえば、すぐ近くにムサシの住んでいた屋敷があったはず。それに、最近熊本城は昔そのものに再建されたばかりだ。しかも、ムサシが生きていたあの時代に近い状態で。

 なにやら、息子の興味がその辺にあるようで、私はちょっとわくわくしてきたのだった。(つづく)
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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