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ムサシの桜

 「まるで、市にきているようじゃ。人も物もこの屋敷にはあまたござる。全てがまばゆいばかりに輝いておる」

 ムサシは、コンビニの中を眼をしばたたかせながらゆっくりながめた。

 このコンビニはどちらかというと古い方だし、私にはどう見ても輝いているようには見えない。はじめて東京へ上京したとき、空港が光り輝いて見えたことがあったが、ムサシもそのときの私のように、見たこともない世界に降り立ったことで、そんなふうに見えたのかもしれない。

 あとから入ってきたファミリーの客は、ムサシのジャンプを見ていたらしく、ムサシをみつけると、互いに目配せをした。

 その中の五歳くらいの男の子が興奮したようすで、ムサシに近づき、「おじさん、――すごかったよ! ビュウーンって」と両手をそれ以上は伸ばせないだろうという高さまで上げてみせた。

 ムサシは恥ずかしそうに笑った。

 「いや、いや、これは困った。私は車に戻っておったほうがよいようじゃ」

 ムサシは私の耳元でそうささやくと、素早い動きで、店内を抜け、一瞬自動ドアの前で立ち止まったあと、出ていった。

 冷蔵庫の前でペットボトルの飲料水を選んでいた息子の方へ眼をむけると、息子は仕方ないさ、あのジャンプは凄すぎたからねっといった仕草をしてみせた。

 私たちは仕方なく、ムサシ抜きで、飲み物を調達した。ムサシの好みは夕べの食事で知っていた。球磨焼酎があればいい。それに缶ビールを六缶と、赤ワインのボトルを一本加えた。ノンアルコールの飲料は息子に任せて購入する。

 駐車場へ戻ってくると、何人かが、ムサシの乗った車を遠巻きにして、あの爺さんは凄いなんぞと噂していたので、ムサシは居心地悪そうにしていた。(つづく)
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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