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ムサシの桜

 私たちは東側の門から入り、天守閣のあるあたりをめざし、観光客や花見客でごったがえす中を歩いていった。

 花は満開をすぎ、はらはらとその花片を散らしていた。真っ青な空に餅を伸ばしたような白い雲が浮かんでいる。明日あたりは一雨くるか。そうなれば、花も今日が見おさめになるだろう。

 「天守閣に登ろうよ!」

 先を歩いていた息子が振り返って言った。

 「そうね」

 そう答えて私は宮本武蔵の顔を見た。

 「いや、今日はよしにいたそう。いずれまた機会もござろうて」

 ムサシは首を振って息子にそう言った。

 「残念。でもまた来れるよね。今度は絶対いこうね」

 なんだか、ムサシより息子のほうが観光気分のようだ。ムサシにとって天守閣は細川忠利公のいた場所であり、懐かしくないわけがない。もしかしたら、駐車場代や、花見の飲食代やらを私たちが負担していることを気にして遠慮しているのかもしれない。

 私たちは二の丸公園の端のほうに、かろうじて2メートル四方の場所を得た。桜の木の根が地面にはってでこぼこしていたが、それでも場所が確保できただけでもありがたいと思わなければならない。

 さっそくもってきたシートを広げ、花見の弁当を広げる。

 ひととおり準備ができて、三人シートに座ると、一番近くにある桜の木の向こうで、花のもとなごやかな雰囲気をぶちこわすような男の声がきこえてきた。

 「ねえちゃん、こっちでいっしょに飲もうよ!」

 二十代後半ぐらいの男たち四五人が、桜の木より少し離れた場所で花見をしており、そのうちの三人が、別の女性二人の花見客に声をかけているのだった。

 男たちはポロシャツにズボンというラフな格好だったが、紫や黒といったいかにもという色合いや、サングラスをかけているものもおり、まわりの花見客は見て見ぬふりをしているのだった。

 まあまあと男たちにせき立てられ、とうとう二人の女性は両腕をかかえられるようにして、男たちが花見をしている場所へと連れていかれそうになる。

 私ははらはらしながらもどうにもできずにいた。

 そのとき、目の前に座っていたムサシがすっと立ち上がった。(つづく)
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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