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ムサシの桜

 背中に鷹のもようのある男が、背後に控えていた、小柄で、アフロヘアの、なかでは一番若そうに見える男に眼で合図した。

 「楽勝っす!」

 アフロヘアの男はにやけた顔でそう応えると前へ出た。

 アフロに睨みつけられたムサシは「――怪我をするのはそのほうじゃと申しておろう。いまならまだ間に合う」とこどもをさとすように言った。

 「じいさんこそ、足腰たたねぇぞ。覚悟しな」

 「どうしてもというのなら、仕方あるまい」

 ムサシは右足を一歩前にだし、右手をまえに腰を低めてかまえた。

 アフロは駆け足でムサシに近寄り、右手の拳をムサシの顔めがけて振った。

 だがその手は空を舞った。一瞬はやく、ムサシは後ろに飛び退いてその手をかわしていたのだった。
 しかも隙となった右わき腹に、右手の一撃を加えていたので、アフロはあふっと声をもらしてその場に右の膝をついた。

 ムサシにやられたことが信じられないのか、一瞬首を傾げてから、おーりゃーと叫んで立ち上がり、ムサシに跳びかかった。

 またしてもそれをかわし、ムサシはアフロの頭上の桜の枝に両手でぶら下がった。ムサシの姿を見失ってきょうろきょろしているアフロの胸を蹴飛ばしたのだった。

 アフロはばったり後ろに倒れ、脳しんとうをおこしたのか、仰向けに倒れたまま動かない。

 それを見た他の仲間も次々に枝にぶら下がっているムサシに跳びかかった。

 ムサシはそのまま右に左にかわし、蹴り飛ばしていく。

 その動きに耐えられなくなったらしく、桜の枝がめきめきと音をたてて折れた。不安定ではあったが、無事地面に足をおろしたムサシは、皮一枚残してくっついていた桜の枝を完全にはぎ取って、右手でその枝を木刀がわりにしてかまえた。

 一人静観していたサングラスの男が近くにあった飲みかけの缶ビールを蹴飛ばし、ムサシの前へ歩みでた。アフロは依然として起き上がらない。

 私は一抹の不安を覚えた。

 それはムサシが道場破りをしたさいに、木刀で頭を割って死なせてしまったという話を父がしていたのを思い出したからだった。

 「宮本さん。手加減してください!」

 私は大声でムサシに叫んだ。

 「心得た」

 サングラスの男から眼をはなさずにムサシはそう応えた。(つづく)
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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