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ムサシの桜

 警察がきたじてんで、拉致されかけた二人の女性は、まわりでムサシと男たちの格闘を見学していた者たちにより、保護され隠されていた。

 戦った五人の男たちとともに、ムサシもパトカーへと連れて行かれることになった。

 聴衆は男たちには冷ややかな眼を向けたが、ムサシに対しては、拍手で見送ったのだった。

 被害にあった女性二人も警官に駆け寄って、「この人は悪くないんです。私たちを助けてくれたんです」と必死の形相で言ってくれたので、警官もムサシには丁寧な口調で接してくれた。

 私たちもシートをかたずけ、迷惑をかけたまわりの人たちや、城の管理人さんにお詫びをして、ムサシのあとを追うことにする。

 幸いに皆が自分たちのことは心配しないでいいから、あの勇気あるお爺さんについていってやってくれといってくれたので、私たちは思ったより早く、警察署へいくことができた。

 警察署から出てきたムサシは、警官とうち解けたようすで話ながら別れをつげると、私たちの顔を見て、申し訳なさそうに顔を傾けた。

 「おかえりなさい!」

 息子も私も笑顔でむかえた。

 「いや、かたじけない。楽しいはずの花見がだいなしでござるな」

 「いいえ、悪いのはあの男たちで、宮本さんがやっつけてくれたので、私せいせいしました」

 「ほんと、僕も気持ちよかった。全然気にしなくていいんだから」

 ムサシも少し安堵したようすをみせた。

 「しかし、桜の枝を折ってしまったのが、気がかりじゃ。枯れてしまいはせんだろうか?」

 「管理人さんには私たちのほうで謝っておきました。一本枝が折れたところで、あの桜が枯れるとはおもえません、今回はお嬢さんたちを救っていただいたので、折れた枝のことは気になさらずとも結構ですということでしたよ」

 「そうでござるか、かたじけないことだ」

 「あのう、警察で氏名や住所など聞かれたと思うんですけど、何て応えたんですか?――だってあなたは本来ここにいない人ですし、調べられたら、誰だって話しになって面倒なことになりますものね」

 「ははは……そういうときには私の名前をつかわれよと、お父上が申されておったゆえ、拝借いたしもうした」

 「父の名を? それもまずうございましたわね。だって父はこの世にはおりませんもの」

 「しかし、それぐらいならかまいますまい」

 ムサシはいまの時代が戸籍だとか住民票だとかで人を固定できることを知らないのだ。

 「そうですわね。こうして無事返してもらえたことですし、問題はなかったということでしょう」

 知らなかったとはいえ、ひやひやものの状況を、平気でムサシはのりきっていたことに、私は笑いをこらえるので精一杯だった。(つづく)
 
 

 


 
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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