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ムサシの桜

 それからの宮本武蔵は陽気だった。よく笑い、よく飲み、よく喋る。

 「どうしたらそんなに強くなれるの?」

 「さてのう……」

 「どうやったら喧嘩に勝てる?」

 「……相手をよく観ることかのう」

 「僕も強くなれるかな?ほらこんな風に!」

 一緒になって騒いでいた息子も、お酒に慣れていないせいもあって、次第に力尽きたように座り込み、しまいにはそのままうっぷして眠ってしまった。

 その寝顔を肴にムサシは杯をすすめた。

 「すいませんねぇ。あの子、お酒、強くないの。でもねぇ、宮本さん、嬉しかったんですよ。あんなに楽しそうな息子を見たのはひさし振りよ。ありがとうね。ほんとうにありがとうね」

 私は嬉しくて、なんだか涙がでてきた。

 「私、泣き上戸なんかじゃありませんからねぇ」

 いや、絡み上戸かもしれない。息子だけではない。陽気になって飲み過ぎたのは私のほうだった。

 「ねえ、ねえ、みやもっさんて、好きな人いなかったんですか?」

 アルコールの勢いで、私は大胆な言動にでていた。

 ムサシはふっふっふっと含み笑いをした。

 「だめですよ。ちゃんと答えてもらいますからねー」

 「そなたはどうなんじゃ?」

 これはこまったというような表情を浮かべ、ムサシは反対に話の方向をこちらに向けた。

 「わたしぃ?――っにもない、ぜっぜん、なっにも。あの人が死んでから、ずっとそんな暇なかったですもん。……ひっく」

 亡き夫のことを思い出したら、私は悲しくなった。どうして死んじゃったんだろう、もっといっぱい夫といたかった、思い出ももっと欲しかったのにと。

 「おい、答えろ!なんで先にいきやがった。私一人置いて――」

 私はムサシを夫と錯覚して絡んだのだった。(つづく)
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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