スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ムサシの桜

 ムサシにあったらどんな顔をしたらいいんだろう。

 夕べのことは何も覚えていないといってとぼけてしまおうか。

 多分醜態をさらしたことは間違いない。やっぱり正直に謝るべきだ。

 穴があったら入りたい。

 私はそっと部屋の戸を開けて、廊下へ出た。

 台所にいってみると、ダイニングの上に、夕べの食べ残しや半分入ったままの焼酎やビールの空き缶などが置かれていた。

 これらを運び入れてくれたのは、ムサシにちがいない。

 お客様をもてなすつもりが、反対に酔いつぶれてしまった我が身が情けなく、こんどは穴を掘ってはいりたいと思った。

 台所のそれらのものを片付け、ご飯を炊き、大根の味噌汁を作った。

 その間、家の中はひっそりとしていた。

 息子は寝ているにちがいない。まだ、どうしたらあんなに寝れるのかと思うほど、眠る年ごろだ。

 ムサシはどうなのだろう。

 私は息子の部屋へむかった。

 戸の前で、二三度声をかけてやっと返事がかえってきた。

 「入るけど」

 締め切った部屋からむっとした空気が外に漏れた。

 息子は布団にくるまったまま、薄眼で私を見ていた。

 「うん?」

 「朝ご飯ができたんだけど、食べる? 」

 「――いい。食べたくない」

 そう言って、息子は力つきたように眼を閉じた。

 私は戸を閉めかけて、手を止めた。

 「ねえ、花見のあとかたづけをしてくれたの、宮本さんかしら? 」

 「――うん。僕も手伝った」

 息子はめんどくさそうに言った。

 「あなた眼をさましたのね? 」

 「――母さん運ぶの、大変だったんだから」

 その言葉に私は少し安堵した。

 息子は酔いつぶれたけれど、あとで眼をさまして、ムサシと一緒にあとかたづけをしてくれたのだ。

 「あなたが運んでくれたの? 」

 「いや、宮本さんだよ。僕は靴とか運んだ」

 息子はもう勘弁してくれとばかりに布団に顔をもぐらせた。

 「ありがとう」(つづく)

スポンサーサイト

テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
プロフィール

きなこ

Author:きなこ
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。