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ムサシの桜

 五分ほどそうして雨の中立っていた私は、結局ムサシに声をかけらず、そのまま家へ戻ったのだった。

 朝ご飯を済ませたころ、玄関で音がした。ムサシがかえってきたのだ。

 私は浴室の棚からタオルをとりだし、玄関へむかった。

 ムサシの肩はびしょ濡れになっていた。

 「あの……どうぞ!」

 差し出したタオルをムサシは手にとり、かたじけないと礼を言った。

 「朝ご飯ができていますが――?」

 「それは申し訳ない。もうすませておりまする」

 「そうでございますか――」

 ムサシは夕べの宴の残りものをかたづけたのかもしれない。

 「夕べは、大変お世話になりました。息子から聞きました。お恥ずかしゅうございます」

 「いえ、気に召されるな。酒は心の掃除をしてくれるもの。すっきりなされたのではないかな?」

 そう言われれば、二日酔いで少し頭が痛いものの、心ははれやかで、肩の荷が下りたような軽さがある。

 はいと私は答えて、「これにこりず、また息子と飲んでやってください」と告げた。

 ムサシはにっこり微笑んで、首をたてにふった。

 「お昼ですが、梅干しの入ったにぎりめしを三個ほど作って、私の寝所の前に置いておいてもらえまいか。――それと、これから、しばらくは部屋にこもりますゆえ、そっとしておいてもらえるとありがたい」

 「わかりました。お昼におにぎり三個ご用意し、部屋の前に置かせていただきます。誰も部屋へは入らないようにしますので、お心おきなく」

 夕方ムサシがかえるまでの間、ムサシと話がしたいと思っていたが、それは無理のようだ。(つづく)

 
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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