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ムサシの桜

 翌日は高校へ出勤する日だった。

 休みを取っていたぶん、仕事もたまっている。残りの春休みをつかって、かたづけなければならない。

 職員会議などもはさまっていて、毎日が忙しく、市内の自宅に帰りつくのはいつも夜中だった。

 仕事がかたづいて、一段落したのがその週の土曜日の午後だった。

 忙しくしていたせいで、寂しいという感情がわかなかったことは、幸いだったかもしれない。

 阿蘇の父の家を再び訪れる。

 車を降りて、しんと静まりかえった家をまえにして、一週間前に、ここに宮本武蔵がいたことが信じがたく思えた。

 しかし、ムサシはたしかにここにいたのだ。

 誰もいない家に入ってみると、廊下や仏壇のまえにまだムサシがいるような錯覚をおこした。

 明日になれば、息子は帰ってくるだろう。

 しかしムサシはもういない。いや、またやってくるとムサシは言った。

 タイムマシンの資料を調べた息子の話では、父のタイムマシンは完璧なものではなく、ムサシの時代のいた場所にピンポイントでいくことができたのは、かなりの幸運に見守られたからであって、では他の時代のある場所をねらって――とこころみても、それはかなり難しいことであるらしい。

 ただ、ムサシのいた時代の彼の屋敷へいくことができたこのタイムマシンは、その後もその時代と繋がっていて、ボタン一つで行き来できる状態なのだという。

 繋がった時の線を一旦切ってしまえば、もう二度と繋げることはかなわないらしい。

 父はムサシとの交信を断たなかった。そのかわり、こちらで時が流れるのと同じで、向こうの世界でも時は流れている。つまり、私たちが出合ったムサシよりも若いムサシに会うことはできないのだ。

 ムサシとはこの先あと何回会えるだろうか。(つづく)

 
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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