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ムサシの桜

 昼近くなって、息子が帰ってきた。

 「ただいま!」

 日やけした顔の中で、歯だけが白くみえた。

 「ほら!」と言って、息子は腕まくりをして右の上腕をあらわにした。
 
 立派な力こぶがあった。息子はこの一週間で随分逞しくなったようだ。

 「ムサシに鍛えてもらったんだ。――力だけじゃないんだよ。喧嘩に勝つ方法も教えてもらった。ねえ、凄いでしょう」

 息子は楽しそうに笑った。向こうでの生活は充実していたのだろう。

 「ふーん、喧嘩に勝つ方法? 私にも教えてちょうだい! 」

 「――うーん、どうしようかなあ」
 
 「なに、それ、勿体ぶって――ご飯あげないから」

 「まあまあ、なにせ、剣豪宮本武蔵直伝ですから、多少はもったいつけないと――」

 「あっ、そう。じゃあ、ご飯いらないのね」

 「――あのね、喧嘩に勝ちたかったら、かっこつけるなっていわれた」

 「えっ、――それだけ?」

 「そう」

 「ほんと?」

 「ようするに、勝つことだけを考えて、なりふりかまわずいけってことなんだ。相手のことをよく観ること。ムサシは自分より強い相手と闘うとき、相手をよくみたって。相手の癖とか、右利きか左利きかとか、歩幅、ときには息づかいまでよく観察する。それがみえるまで、手を出さない。逃げ回って見苦しいと思われるかもしれないけど、気にしない」

 「見きるってことね」

 「そう。それで、大半、勝負はついたといっていい」

 「なるほどね。相手のさきの行動をよんで先回りするってことね」

 「まあ、それも簡単じゃないんだけど、反射神経と頭脳両方を機敏につかうといいらしい」

 「極意?というわけでもないだろうけど。良いこと教えてもらったじゃない」

 息子はかおを綻ばせて頷いた。(つづく)

 

 
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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