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ムサシの桜

 その日の夕飯は久しぶりに息子と二人だった。息子はあちらでの生活をあれこれと矢継ぎ早に話し、ご飯を食べるのももどかしそうにみえた。

 ひとしきり話がすんで、息子は「ムサシがね、お母さんによろしく伝えてくれっていってたよ」と話を締めくくった。

 私は頷いてから、「――この家のことなんだけど」と話を切り出した。

 息子は「あっ、それ、僕も話しがある」とあとにつづけた。

 「夏頃までに売ろうと思っていたんだけれど、やめようかと思って……」

 「うん。僕もその方がいいと思う。だって、売っちゃったら、もうムサシに会えなくなるもの。それに、祖父ちゃんのマシンも興味深い。色々調べてみたいしね」

 「お祖父ちゃんのマシンは不完全だって言ってたじゃない。変なことになって、こちらの世界へ戻ってこれなくなちゃったら困るから、それだけは気をつけてちょうだいね」

 「分かっているよ。それぐらい用心してるから」

 「それでね、いっそのことこっちへ引っ越しちゃおうかと思ったんだけど、どう思う?」

 「うん、うん、それいい。賛成!」

 「通勤、通学が大変になるんだけどね」

 「僕免許持ってる。祖父ちゃんの軽トラもあることだし、なんとかなるよ。それに僕、アルバイトしようと思ってるんだ。ほら、隣町の出荷場、あそこで人をさがしてるって」

 「えっ、あなたが出荷場でアルバイト?大丈夫なの?」

 おおよそ農業とは縁のない生活をしてきた息子から出た言葉とは思えなかったが、息子は大まじめのようだった。

 「向こうでね、畑も少しやってきたんだ。結構面白かった」

 「ちょっと遊びでするのとは違うんだから。野菜の名前とか分かるの?」

 「そりゃあ、見て覚えるしかないね」

 私は息子の暢気さにあきれた。(つづく)
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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