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風の丘のオカリナ

 

 牡鹿はクンタの姿に気づいてはいない。

 クンタは慎重に腰の矢筒に手をやり一矢引き抜くと、弓を引いた。

 視界には牡鹿の顔がしっかりととらえられている。

 茶色と白で彩られたしなやかな顔、そこに黒い大きな目が光っていた。

 なにか神々しいまでに研ぎすまされた牡鹿のそのに、クンタは釘付けになった。

 いや、そうではない。俺が狙っていた獲物は灰色熊ではなかったか?

 一瞬の迷いがクンタの手を鈍らせた。

 矢は宙をかけ、牡鹿へ向かっていた。

 直前で気づいた牡鹿だったが、矢の方が先に動いていた。

 矢は牡鹿の左頬をかすって、後方の木の幹に刺さった。

 クンタは狙いをはずしたことに気づいていた。

 牡鹿はぐうぅと低い声で啼き、近くにいた鹿の群れがいっせいに動き出す。

 逃げまどう鹿たちは森に風を起こし、いずこかへと姿を消した。

 これでよかったのだ。

 俺が狩りに出た目的は、大人として村の者に受け入れて貰うということだけでなく、兄のように慕うユンマの右目を奪った灰色熊に一矢報いるためではなかったか。

 クンタはふうと息を吐き、暗く深い緑に彩られた森の奥を見た。(つづく)

 

 
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