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記憶の旅人

 人は、自力で旅が出来なくなると、記憶の旅に出るようになるらしい。

 昔お世話になったあの人は今どうしているだろうか――。住所を書いたメモがどこかにあった筈。

 半世紀も前に、借家住まいだったあの人の住所を求め、彼女は部屋中をさがす。

 箪笥の引き出しをひっくり返し、押し入れの奥にしまっていた箱を引っ張り出す。

 ――みつからない。

 くる日も、くる日も、彼女はさがし続ける。

 箪笥の引き出しをひっくり返し、押し入れの奥から箱を引き出す。

 時に手を休め、記憶の中のあの人に会いに行く。そして、若き日の自分に出合う。

 嗄れた手をかざし、白魚のような手を観る。

 こしのなくなった白い髪をかき上げ、鏡の中に、豊かな黒髪で結い上げられた形の良い頭を観る。

 ここにあるのは私ではないと、彼女は思っているようでもある。

 行きつ戻りつする記憶の旅、

 狂おしいほどの時が、六畳の部屋の中で刻まれる。

 
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テーマ :
ジャンル : 小説・文学

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