風の丘のオカリナ
森の覇者
灰色熊らしき爪痕を発見して六日、クンタは冬眠に使っていたと思われる穴を見つけた。木の実の食べかすなどに付着している毛はあきらかに灰色熊のものだった。
ただ、それが探し求めている灰色熊であるかまではわからない。けれども、そう信じたい、でなければ、心が折れそうだった。
クンタはその穴の近くで夜をあかした。
闇夜だった。
眠っていたクンタを何かかが揺り起こした。背中を木の枝が押しあげたのだった。
暗闇の向こうに何かが存在する。
クンタの眠気はいっぺんに覚めた。それは大きな熊の影だった。
灰色熊か?
クンタは上気する心を抑え、黒い影に集中した。
微かに聞こえる息づかい、踏みしめる足音。
熊はクンタの右側を通り、前の方へ歩いていく。
伸び上がり木の陰からその姿をとらえる。
クンタは思わず手を握りしめた。
ぼんやりとしてはいるが、熊の左耳は右のそれより短かった。
クンタは弓を手で探った。
しかし弓を射るにはあまりに近すぎる。一度にしとめなければこちらが危ない。
クンタは弓を手に気づかれないように灰色熊の前方へとまわりこんでいく。
つかず離れず見失わないようにあとを追った。(つづく)
灰色熊らしき爪痕を発見して六日、クンタは冬眠に使っていたと思われる穴を見つけた。木の実の食べかすなどに付着している毛はあきらかに灰色熊のものだった。
ただ、それが探し求めている灰色熊であるかまではわからない。けれども、そう信じたい、でなければ、心が折れそうだった。
クンタはその穴の近くで夜をあかした。
闇夜だった。
眠っていたクンタを何かかが揺り起こした。背中を木の枝が押しあげたのだった。
暗闇の向こうに何かが存在する。
クンタの眠気はいっぺんに覚めた。それは大きな熊の影だった。
灰色熊か?
クンタは上気する心を抑え、黒い影に集中した。
微かに聞こえる息づかい、踏みしめる足音。
熊はクンタの右側を通り、前の方へ歩いていく。
伸び上がり木の陰からその姿をとらえる。
クンタは思わず手を握りしめた。
ぼんやりとしてはいるが、熊の左耳は右のそれより短かった。
クンタは弓を手で探った。
しかし弓を射るにはあまりに近すぎる。一度にしとめなければこちらが危ない。
クンタは弓を手に気づかれないように灰色熊の前方へとまわりこんでいく。
つかず離れず見失わないようにあとを追った。(つづく)
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