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風の丘のオカリナ

  許嫁

 旅立ちを明日に控えた朝、イタナがクンタを訪ねた。

 イタナは上下とも白い服に後ろで束ねた髪も白い布の紐で結んだ清楚な装いだった。

 「ごめんなさい。忙しかったかしら」

 クンタはいやと答えて、村はずれの小さな丘へ行って話をしようと持ちかけた。

 イタナも承知して、二人は家を出た。

 途中で、生意気盛りの子供たちが二人のことをはやしたてたりしたが、クンタが恐い顔をしてみせたので、すぐに引き下がっていった。

 イタナは赤い顔をしてクンタの後ろを歩いた。

 村が一望できるその丘は風が心地よく、二人が話をするのには絶好の場所だった。

 「――明日ですね」

 イタナはうつむいたまま小さな声で言った。

 「夜明けとともに家を出るつもりだ」

 「ええ」

 イタナは何か言いたそうにもじもじした。

 婚姻の件だろうとクンタは察していた。

 「婚姻の話は聞いているんだろう?」

 「ええ」

 「俺はユンマの仇をうちたいんだ。灰色熊は恐ろしく強い奴だ。もしかしたら命を落とすかもしれない。だから、婚姻の件は俺が戻ってから話すということにしてほしいんだ」

 「――じつは、私を妻にという人がいて、ううん、私はそのつもりはないんだけれど、あなたと約束しているって言ってもいいかしら?」

 クンタは思いもかけないことをイタナが言ったので、少し戸惑ったが、首を振った。

 イタナの顔が急に暗くなった。

 「俺がもし戻って来なかったら、おまえは独りになってしまう。良い相手がいれば好きにするがいい。親どうしの約束など気にすることもない」

 イタナは泣きそうな顔になった。

 「――私が嫌いですか?」

 「ちがう。俺はおまえを若後家にしたくないだけだ」

 「あなたは私が他の男と一緒になっても平気なのですか?」

 「そんなことはない。ただ、あの熊を倒さなければ俺は一生後悔する気がする。それまで待っていてくれとは申し訳なくて言えない」

 イタナは青い顔をしてクンタの顔を見た。

 「ひとこと約束してくだされば、私はいつまでも待っています」

 「いや、やっぱり約束はできない」

 その言葉を聞くと、イタナは何も言わず先に丘をおりていった。

 約束をしない方が結局はイタナのためになるのだとクンタは信じた。

 イタナのさびしげな後ろ姿を、クンタは申し訳ない気持ちで見送った。(つづく)
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