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風の丘のオカリナ

 旅立ち 

 旅立ちの日、前の晩に家族とすごすことのできたクンタは、これでもう思い残すことはないと思った。

 母親の心配そうな顔を見ていると心が痛んだが、すぐ下の弟は背丈も伸びて子供ではなくなっていたし、父ハルヒナも元気でいる。片耳に臨むには今が好機というもの。

 見送りは無用と伝えてあったが、母親だけは起きていてクンタを見送ってくれた。

 村のはずれから、家の小さな明かりが見える場所で、クンタは振り返って、「いってきます」と言うと、一礼し、向き直って、今度は早足で歩いていく。

 長老から魔女の話を聞いてから、クンタは時々夢をみる。

 崖地で片耳と死闘をくりひろげたクンタは、追い詰められた片耳に最後のとどめを刺そうとしたそのとき、白い手によって首を後ろから羽交い締めにされる。

 ミライと名乗ったあの女の手だ。それは幼いころみた、蛇が子狸を絞め殺している姿に似ていた。死を感じさせる冷たい感触がクンタの首にまとわりつく。子狸の悲しそうな目を思い出し、クンタも同じ目をしているのかと思う。

 そこで目が覚める。クンタは汗びっしょりで、肩で息をはく。

 嫌な夢だ。

 さらに夢の続きを考える。

 クンタの背中に女の手が忍び込み、体の中の骨という骨が全部抜き取られていく。

 クンタは立っていられなくなり、その場に洗濯物のようにへたりこむ。

 逆夢だと自分に言い聞かせ、嫌な映像を振り払う。

 片耳も恐るべき存在だったが、いまのクンタにはミライの方が遙かに恐ろしく感じられた。

 それでもクンタを旅へと突き動かすもの、それが何なのか、クンタにもよく分からなかった。(つづく)

 

 

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