スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

風の丘のオカリナ

 音色

 ミライの住む塔を出て半日、陽の傾きはじめたころ、クンタはとある崖の上にいた。

 太陽の位置で、方向は間違っていないはずだが、崖下の路を歩いていると、自分がどれほどの距離をいっているのか分からなくなる。そろそろ腹も空いてきたことだし、様子見がてら一休みして、ミライが作ってくれたおにぎりで腹ごしらえをすることにしたのだった。

 クンタはミライの願いも聞き入れず、片耳を追っていくのに、ミライは昼食にとおにぎりを用意してくれたのだ。申し訳ない思いで、断ろうかと思ったが、折角用意してくれたものを拒むのも悪いようで、受け取ったのだった。

 いままでクンタは、猟で得た獲物の肉と、村の女たちが育てている芋と、村で飼っている鶏や山羊から得られる恩恵だけしか、口にしたことがなかった。

 世の中にはクンタの知らぬものが沢山あるのだと、ミライの料理を食べて思った。そして米でできているというこのおにぎりもはじめて口にするものだったが、とても美味しいと思えるものだった。

 カリオの村の者にも食べさせてやりたいものだ。

 心地よい風が顔をなでていく。汗ばんだ服もすぐにかわきそうだ。

 塔から見えた景色はどこまでも崖地が続いていたが、この崖からは遙か向こうに黒い森が見え、その向こうに白い山が霞んで見える。

 片耳はどこまでいってしまったのだろうか?あの森に?それともあの白き山か?

 風に乗って微かな音がする。それは長く尾をひいたように余韻をのこし、清んだ景色の中に吸い込まれていった。

 もしかして……?

 クンタは振り返った。

 ミライのいる塔はもう遙か彼方にうっすらと見えるだけだった。

 オカリナか?ミライが吹いているのだろう。

 途切れとぎれに聞こえてくるメロディはなめらかで、下手だからと恥ずかしがるような未熟なものではなかった。

 しばらくクンタは風の音に混じって聞こえてくる曲に耳を傾けた。

 なんて悲しげな音色なんだ。

 クンタの心をわしづかみにして、揺さぶる。

 これは何なんだ?胸が締め付けられる。

 はじめて経験する感情にクンタは戸惑った。(つづく)
スポンサーサイト

テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
プロフィール

きなこ

Author:きなこ
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。