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風の丘のオカリナ

 黒い森
 
 黒い森へと入り、三たび陽が昇った昼、ついに熊の姿をとらえた。木々の間に見え隠れする黒い影、それはあきらかに獣の動きだった。

 灰色熊に間違いない。

 クンタの心臓の動きが速くなった。

 こちらの気配に気づかれないように近づき、片耳であるか確認する。

 左の耳に欠けがない立派な耳をしている。

 片耳ではない。別の灰色熊だ。

 クンタはがっかりした。

 その時、倒木の陰から黒い別の影が灰色熊に近づいた。

 もう一頭灰色熊がいた。 しかも今度は片耳である。

 クンタの心は騒いだ。

 二頭はつがいらしく、時々肩を擦りあわせたり、前足をからませたりしている。

 クンタは弓を手に持って機会を待った。

 片耳を射た場合、もう一頭の熊が襲ってきはしまいか?

 折角得た機会だが、ここは慎重にいかねばならない。

 クンタは二頭のあとを追うが、なかなか二頭が離れるときがない。

 そうこうしているうちに、黒い森は途切れとぎれになって、山の裾野へと向かっていった。

 見上げると、頂に白い雪が積もっているのが見えた。

 二頭の姿は、黒い森よりも鮮明に、緑の中に浮かび上がって見えた。

 片耳より一回り大きい熊が走り出し、そのあとを片耳が追う。互いに追いかけてじゃれ合っているのだ。

 クンタは木の陰から片耳を狙い、 二頭が大きく離れたとき矢を放った。

 矢は弧を描いて飛び、片耳の左のわき腹に刺さった。

 どさっという音がして、片耳のからだが地面に横たわった。

 駆け寄ったもう一頭の熊が、片耳の腹のしたに鼻を入れて起こそうとするが、片耳はぐったりして動かない。

 クンタはとどめを刺す機会を探ったが、もう一頭の灰色熊が傍を離れないので射ることができない。

 もう一頭の熊は片耳の周りを行ったり来たりして、ときどき鼻で片耳のからだを突いたりしたが、動かないことに気がつくと悲しそうな声で吠えた。

 クンタはふっと、ミライの吹いたオカリナの音を思い出した。悲しげな胸を締め付ける音色、あれは孤独から抜け出したものが再び孤独におちいったときに奏でる悲鳴ではなかったか?

 クンタは目眩がした。とんでもないことをしてしまったという罪の意識に苛まれる。

 もしかしたら、片耳は子をはらんでいたかもしれない。カリオの村の狩りの掟では、子をはらんだ獣、子連れの獣を殺してはいけない。もしかしたら掟破りをしたかもしれない?

 ユンマの嬉しそうな顔、ほっとしたような両親の顔、長老の鋭い眼光、色々な思いが混乱をおこした。

 熊の泣き声とオカリナの音が重なってクンタの胸を締め付ける。クンタは耳を両手で塞いだ。(つづく)

 

 

 
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テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

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