スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

風の丘のオカリナ

 

 顔に何かがあたって、クンタは目を開けた。

 木の下で仰向けになって眠っていたらしい。が降り出して、木に溜まった雨が雫となってクンタの体に落ちだしたのだった。

 どのくらい眠っていたのだろう。太陽が雲に隠れていて、あたりは薄暗く、朝なのか昼なのかもわからない。ただ雲の間からうっすらと明かりが見えるので、夜でないことはわかる。

 熊は上りには強いが下りには弱い。あの急斜面のおかげで命拾いしたようだ。もう灰色熊が追ってくることはないだろう。

 そして片耳も生きてはいないだろう。

 あれほどこだわっていたことだったのに、倒したという喜びが沸いてこない。むしろ後味の悪さがクンタの気分をなお悪くしている。

 寒い。黒い森の雨は冷たく、クンタの体温を奪っていく。

 雨は激しくなっていった。

 クンタはより大きな木をさがしてその下に寝そべった。

 空腹だったが、雨の中、食べ物を探しにいく気もおこらない。この時期、実となるものは少なく、獣は巣にこもってじっと雨がやむのを待っていることだろう。それに川に落ちた際に矢を失い、獣を射ることもできない。

 雨は七日間降り続いたのだった。

 その間クンタは、蛙をさがして餓えを凌いだ。

 灰色熊に襲われたお尻は熱を帯びて腫れ上がっている。地に足が着いていないように、体がふわふわする。

 ミライにあいたい。

 ミライの友だちであった片耳を殺してしまったのだ、会える道理がない。

 クンタは狩人としての誇りミライを求める心の叫びとの間で葛藤し、苦しんだ。

 それでも、土砂降りの雨の中、足は塔へと向かっていた。

 片耳はやはり子をはらんでいたのかもしれない。カリオの村の掟はつまり、自然の掟をあらわしている。掟をやぶれば、森の神の怒りをかうと言い伝えられている。この雨はきっと神の逆鱗に触れたせいだ。

 雨はやがてやんだが、朦朧とする意識の中で、クンタはを感じ始めていた。

 死ぬ前に、ミライに一目でいいから会いたい。クンタはその念だけで、足を動かしていた。

 そして崖の上の塔の前にクンタは辿りついた。

 戸を叩く。

 戸が開くのが見えた。ミライの姿が見えたような気がしたが、クンタの意識はそこで途切れた。(四章へとつづく)

 

 
スポンサーサイト

テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
プロフィール

きなこ

Author:きなこ
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。