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風の丘のオカリナ

 四章

文明の街

 虫のなくような規則的かつ継続する音、それが時を刻む機械から発せられる音と知ったときは驚いたものだった。

 クンタは白い壁の部屋で、この時計という機械の音をききながらもう随分過ごしているような気がする。

 塔へたどり着いてからの記憶がなく、気がついた時には、この部屋にいた。

 灰色熊に襲われたお尻の傷口から毒がまわって、敗血漿を起こし一時は死に神と背中合わせに寝ていたらしいが、ミライがこのクリニックに連れてきてくれたおかげで、何とか死に神には帰ってもらうことができたのだった。

 いまは歩けるまでになったが、外出はまだ禁止されている。

 外の様子を知る手段は、トイレやこの部屋の窓から見える街の風景だけだったが、それだけでも、じつに驚かされることばかりだった。クンタは外へ出たときのことを想像するだけで目眩を感じた。

 文明の発達した街に、クンタはいた。枕元でミライから聞かされた街の話は信じがたい内容のもので、クンタの想像をはるかに超えていた。

 「お父さんに連絡がとれたから、帰れるわよ。小山先生がもう退院して良いって」

 ミライが桃色の携帯電話を鞄にしまいながら、クンタに告げた。

 「カリオに帰れるのか?」

 「まだカリオへ帰るのは無理だわ」

 「ではへ?」

 ミライは首を横に振った。

 「父と母の家、すばる、元映画館だった場所よ」

 「エイガカン?」

 「うーん、その説明は着いてからってことで、早いところ着替えちゃって。――ほら、これ」

 ミライが紙袋から取り出した上下の服は、濃青色のじょうぶそうな布だった。

 「出てた方がいいわね?」

 ミライは気を遣っているらしい。治療の段階で、すでにクンタの裸体はミライに見られていた。今更という気もしたが、こうして元気になってくると、どういうものか、互いに意識するもののようだ。

 「俺は、構わない」

 ミライはちょっと恥ずかしそうな顔をして頷くと、窓の方へ歩いて行って、窓の外へ顔を向けた。(つづく)
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テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

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