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風の丘のオカリナ

 渋谷

 「気分はどうだい?」

 車を運転していたカナーンにクンタは聞かれ、大丈夫だと答える。

 カナーンはここではカナモトと呼ばれている。クンタを診てくれたコヤマがそう呼んでいるのをみて、奇妙なかんじを抱いたものだ。

 カナーンはミライの父ではあるが、クンタと同じカリオの出身である。今年六十七歳になるカナーンは、カリオなら長生きの部類にはいるし、同年の者たちはもっとヨボヨボの爺さんばかりだ。

 カナーンはこの街へきて、年をとらなくなったのかとクンタは思った。

 「この辺りはね、渋谷っていうのよ。――ほら、あれが109

 カナーンの横に座っていたミライが窓越しに指さしてクンタに教えてくれた。クンタには109が建物をさすのか、その辺り一帯をさすのか分からなかったが、見上げるほどの高さの石壁でできているらしいその建物が光輝いているようすに目を奪われた。

 道には人があふれ、カラフルな布をまとい、一人として同じ格好の者はいない。髪の長い者、短い者、黒い髪、赤い髪、ミライの母親と同じ黄金色の髪をしている者、ここではカリオの村の質素、素朴といった感じのするものは見あたらない。

 人も建物も光り輝いていて、目眩がするほどだ。

 車が大きな道から小さな道へと入っていくと、喧噪が少し和らぎ、人も心なしか少なくなっている。

 「家はね、この辺じゃあ、ちょっと寂しいところにあるの。昔は若い人たち相手のお店が並んでいて、若者でごったがえしていたんだけどね、最近は食べ物の店が多いかな」

 車が曲がりくねった細い道へはいっていくと、人もまばらになり、光は消え失せ、くすんだ壁の家が増えた。

 「――ほら、あそこ」

 ミライの指さす場所には、随分昔に描かれたものなのか、何の絵かもわからないほどすすけた絵が上から吊されていた。

 車はその前でとまった。

 「さあ、着いたよ」

 カナーンが後部座席のクンタを振り向いて言った。

 「ここが、私たち家族の家、私が生まれ育った場所よ」

 崖の上の塔はいつから住むようになったのだろうとクンタは思ったが、カナーンに早く家へはいるように促されたので、それは聞きそびれてしまった。(つづく)

 

 
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テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

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