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風の丘のオカリナ

 すばる

 入り口をはいったすぐの所に小さな小屋のようなものが置かれていて、体を横にして通らなければならない。体格の良いクンタは両手をあげてその狭い場所を通り抜けた。

 「これはね、家の商売道具。お昼から夜中まですばるの前で、ラーメン屋をやっているの。――ラーメンは食べ物、まだクンタは脂っこいものは駄目だけど、二三日したらいいだろうって、小山先生が言ってたから、楽しみにしててね。お父さんの作るラーメンは最高よ。この店、結構はやっているんだから」

 ミライが小屋のようなものを指さしてそう説明すると、カナーンは照れくさそうに笑った。

 クリニックではお粥ばかり食べさせられていたので、早く肉が食いたいと思っていたところだった。クンタは期待を持ってラーメンという食べ物を想像してみたが、思い浮かぶのは美味しそうな匂いをはなって焼けている肉の塊なのだった。

 「右が台所、正面の大きな扉、開けてみる?」

 クンタはうなずき、おそるおそる扉を開けた。

 真っ暗で何も見えない。

 ミライが内側の壁のスイッチを押すと、部屋の四隅に取り付けられたライトがいっせいについて、部屋中を照らした。

 部屋のほとんどを埋め尽くす椅子の上に、段ボールの箱や、何に使うのか分からない機械などが置かれている。

 「ここはね、倉庫として使わせてもらっているけど、昔は映画を見せる所だったの。――映画っていうのは、ほら、いつか写真の説明はしたでしょ、写真は静止したものを映像に残すものだけど、映画は動くものをそのまま記録できるものなの。それで、色々なお話を作ったりして沢山の人にみてもらうのよ」

 クンタは子供のころ、穴蔵でみた壁画を見て心引きつけられたことを思い出した。壁画には狩りの手順を右から左に観ていくことで理解できるようになっていた。カリオの子供は皆一度は目にすることになる、教科書のようなものだった。

 「――驚きだろう。私もはじめはそうだった」

 カナーンはクンタの背後でそう言うと、「私は仕込みが途中だから、ここで失礼させてもらう。あとはミライ、頼んだぞ」と台所へひっこんだ。

 クンタは再び、椅子の部屋へ戻った。

 「映画ってね、夢があって、私は好き。でもね、ここは三十年ほど前に閉館になっっちゃったって。もっと大きな映画館ができて、やっていけなくなったらしいの。持ち主が借金抱えて夜逃げして、借金のかたに貰い受けたのが木島さん。ここは父が木島さんから借りているの。木島さんは、父がラーメンの修行中に店にきていた人で、ラーメンの師匠が亡くなったとき、この味がなくなるのは惜しいって言って、師匠の味を受け継いでいる父にここを貸してくれて、屋台のラーメンを出させてもらうようになったのよ。木島さんには何から何までお世話になっている。とてもいい人だわ」

 隆盛の街とはいえ、良いことばかりではないようだ。シブヤとい街は本当に不思議な街だとクンタは思った。

 「――ごめんなさい。疲れたでしょう。さあ、あなたの部屋へ生きましょう」

 椅子の部屋を出て、入り口より向かって左の奥に幕で仕切られた部屋(おそえらくミライと家族が使っているのだろう)が幾つかあり、その前を通って一番奥の扉つきの部屋がクンタの部屋になっていた。ここにも色々な荷物が置かれていたが、一カ所にまとめられ、ベッドが一つ置かれている。

 ミライがトイレの場所などの説明をして、部屋を出ていくと、さすがに疲れを感じ、クンタはベッドに倒れこんだ。(つづく)

 
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テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

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