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風の丘のオカリナ

 トンコツ

 「はい、あがり」

 カナーンに差し出された器をクンタは受け取って中をのぞいた。

 白っぽい汁から湯気がたち、細長い麺が汁につかっている。上には海苔、紅ショウガ、シナチク、子ネギがかけられている。いずれもシブヤにきて、クンタがはじめて知った食べ物ばかりだ。

 濃厚な汁は、お粥のようなものばかりで枯渇していたクンタの胃袋にしみた。

 「こんなに旨いものが世の中にはあるのかって、思ってるだろう」

 カナーンにずばり気持ちを言い当てられて、クンタは驚いた。

 「私もそうだったからな」

 カナーンは思い出したように笑った。

 「これはどうやってつくるのです?」

 クンタはどこか懐かしい感じがするのに、まったく何で出汁をとってあるのかわからないこの白い汁に興味を抱いた。

 「豚骨だよ。豚の骨、こいつを何時間も煮込んで、そこへ秘伝のたれを加えるってわけだ」

 「トンコツ――旨いよ」

 どうしてだろう。旨い物を口にすると、目の奥が熱くなる。クンタは冷たい雨の中、黒い森を彷徨ったときのことをふっと思いだし、自分がここでこうしてラーメンを食べていることが信じられないような気がした。

 クンタは黙々とラーメンを食べた。

 「お代わりする?替え玉だけどね」

 カナーンの後ろで器を並べていたジュリがクンタに尋ねた。カナーンの妻でミライの母である金髪、青い目の女、名はジュリアという。

 「いただきます」

 クンタの器にゆであがった麺がいれられた。

 カナーンは常連客なのか、白髪頭の男と世間話をしている。

 すばるの前に置かれた屋台の店は、椅子を増やしていったらしく、ウナギの寝床のように横に伸びている。そこに若い男女の客や、中年の背広姿の男などが肩をすぼめるように腰掛けてラーメンを食べていた。

 この人たちはどこからやってきて、このあとどこへ行くのだろう?

 クンタはカリオの村や、野山を思い出し、そことはあまりにもかけ離れた街なみや人の姿に興味をいだいた。

 崖の家へ戻っているというミライのことも気になった。こんどはいつこちらへやってくるのだろうかと、どこか心待ちにしている気持ちには気づいていたし、それが何故なのかもわかっている。

 クンタにはイタナという許嫁がいるが、彼女は妹のような存在であり、妻となる相手ではないのだとミライに出合って知った。

 だがミライは謎の多い女だ。車にも乗らず、どうやって崖の家へ帰ったのか?あの壮大な崖地、これほど大きな街なら、遠くからでも見えたはずだ。シブヤはいったいどこにあるのだ?

 疑問が次々とわいてきて、心が晴れない。

 ミライは何かを隠している。カナーンもジュリもそうだ。

 クンタはもやもやする気持ちをおさえられずにいた。(つづく)
 

 
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テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

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