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風の丘のオカリナ

 父と娘

 「いままで送迎してもらって、ありがとうございました。ミライにバスの乗り方を教わったので、これからはバスで通院します」

 お尻の傷が一応の治癒を経て、ガーゼ交換のみですむようになり、仕込みの時間をぬって通院の送迎をしてくれたカナーンに対し、以前から申し訳ないという気持ちもあり、クンタはやっと気遣い不要と告げることができて、ほっとしたのだった。

 「私は別に構わないがね。運転するのは好きなんだ」

 「バスっていうのはすごいですね。大勢の人を乗せて動いているんですよね。この間はバスの中で転けた人をまわりの人みんなで助けおこしていて、感激しました」

 「まあ、バスとか色々な人が集まってくる場所では、思いがけない出来事に遭遇したりもするからな」

 カナーンには、何もかもが興味深いことばかりで、わくわくしているいまのクンタの気持ちがわかるようだ。

 「――クンタくん、これからどうするつもりなのかね。――ミライのことはどう思っている?」

 いきなりの問いかけにクンタはあわてた。ミライを好きだ。それは分かっていることだが、ミライにその気持ちを伝えたわけでもなく、またミライがクンタのことをどう思っているか、確かめたわけでもない。
どう話をすればいいのかわからなかった。

 クンタは暫く考えて、「――好きです」と答えた。

 「君はカリオの村や家族を捨てることができるかね」

 穏やかな口調なのにその言葉はクンタの心をつきさした。

 「それができないのなら、すぐにカリオに戻ることだ」

 クンタは言葉に詰まった。ミライがクンタを好きで、承知するならば、カリオの村に連れていって、家族に紹介することも考えていた。なのに、カナーンはクンタにカリオを捨てろというのだ。

 「ミライを得るには多くのものを失うことになる」

 カナーンはジュリと恋に落ちたが、、カリオの村の者たちはジュリを魔女と忌み嫌いうけいれなかった。それだけでなく、焼き殺そうとまでしたのだ。

 カナーンはそれを恐れているのか?

 「好きという気持ちが周りを変えるということもあると思います」

 「反対に、好きというだけでは超えられないものもある」

 「私は祝福されて結婚をしたい。そのためにはどんな努力もするつもりです」

 ハンドルをきるカナーンの表情は苦悩に満ちていた。

 「ミライをあの塔から離すことはできない。ならば君にもあの塔で一緒にくらしてもらわねばならない。カリオへも帰らずにね。それが結婚の条件だ」

 ミライとの結婚は思っていた以上に困難な道のりになりそうだ。家族を捨てるなどできそうにない。どうしたらいいのかクンタは悩んだ。(つづく)
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テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

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