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風の丘のオカリナ

 罪人

 「カナーンは諦めなかった。時々現れる監視員に私を塔から介抱するように言ってくれたの。でも、私は罪人、許されるはずもない。完全武装した彼らとカナーンでは、猫と蟻ほどの差もある。それでもカナーンは私と一緒に暮らしながら説得を続けたの。それは無理なことだと分かっていたけど、私は嬉しかった。そしてやがて私のお腹の中にはミライが――。罪人として独り、塔で五十年、白髪のお婆さんになるまでいなければならないと思っていたから、カナーンが一緒にいてくれるというだけで、十分私には嬉しいことだったのだけれど、もう一人家族が増えるというのもいいものだわ」

 「俺も未来を知りたいと思ったことがある。でも俺にはタイムマシンなんてものはないし、異なる時代を行き来するなんてものもない。そんなものがあったら、俺だって未来へいったかもしれないな」

 「莫迦ね。私。でも、おかげでカナーンと出会えたんですものね、後悔はしてないわ」

 ジュリはカナーンと顔を見合わせ幸せそうに笑った。

 「ミライが生まれて、カナーンが言った。カリオの村の両親に孫の顔を見せてやりたいって。カリオで連行されて以来、行っていなかったけれど、きっとカナーンの両親も喜んでくれるだろうと私も思ったから、行こうって答えたの。少しくらいなら塔を離れても問題ないだろうって、勝手に二人とも名得してね」

 ジュリは悲しそうな目になった。

 「ちょうどそのころ、カリオの村ではカナーンを長にという話が持ち上がっていて、私たちが行くと、カナーンが帰ってきたと大騒ぎになって、カナーンの両親も孫の顔を見て大喜びだった。――でも、私は長老に呼ばれて、魔女を村にはおけないと言われたの。連行されたのを見られていたから、罪人であることも知られていたし、言い訳のしようもなかった。ただ、ミライだけが不憫で――」

 ジュリは目の縁を赤くしていた。

 「ミライを連れ、こっそり村を出て、塔へ帰ったわ。それがカナーンのためだって思ったし、そのときにはミライがいた、私は独りじゃないって、この子がいれば寂しくなんかないってね。そして、その夜、事件が起きた。塔がカリオの村の男たちによって燃やされてしまったの」(つづく)

 



 
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テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

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