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風の丘のオカリナ

 風の丘、再び

 「時限の穴カナーンにくぐらせたことは違法行為であると、監視員たちの指摘を受け、さらなる評議が行われたあと、私はあの崖の上へ連れ戻された。塔を築いて、誰も穴へ入ることがないよう見張ること、それが最大の任務であり、刑だった。幼いミライとカナーンと三人で暮らしていこうと努力したわ。でもね、当時あの崖のあたりはいまほど緑がなくて、荒れ地だったの。野菜を植えても育たなくて、たちまち、生活に困ってしまった。それで、ミライを塔に残し、私たち夫婦はこちらで働いて、夜だけ塔に戻るということにしたの。ミライはまだ七つだった。酷なことをさせてしまったと思っている」

 ミライはそれを首を振って否定した。

 「そうしなければ、お母さんは牢に入れられた。そんなこと絶対に嫌だったもの。それに時々はこっちの世界にも行って、お友達と遊ぶこともできたし、私、平気だったよ」

 クンタはいつか聞いたオカリナの、胸を締め付けるような悲しい音色を思い出した。ミライはきっと寂しかったはずだ。それでも平気だと強がる。そんな優しさがクンタは愛おしいと思った。

 「またカリオの村の人に、お母さんのことを知られてしまったらと思うと、私、気が気じゃなかったし、お母さんにはこっちにいてもらう方が安心だったもの」

 ジュリに手を繋がれたミライは、微笑んでその手を嬉しそうに横に振った。

 「さて、さきほどの男女二人のことなんだけれど……彼らは、私たち家族がちゃんと穴の監視ができているかどうか、数日毎にチェックしにきている監視員の一員なの。あなたをこちらの世界へつれてきたことが問題になっていて、いま本国で評議されているという報告を受けたわ。私たちはせっぱ詰まった事情があったことを説明したけれど、正直言ってどこまで考慮してくれるか、あてにならないでしょうね」

 「そんなにその穴をくぐることが罪なのか?」

 そんな穴よりミライたち人間の方が、大事だろうと思った。

 「時間旅行は、その歴史を変えてはならないというのが大原則なの。時限の穴を作って、行ったり来たりできるようにしてしまったということは、重大な法規違反にあたるのよ」

 「そういうものなのか。そんなことを心配するくらいなら時間旅行なんてやめてしまえばいいのにな」

 「私たちの世界では、監視員を同伴させるなどの厳格な規定を守っていれば、時間旅行はビジネスとして成立するの。やめると、たちまち生活に困る人たちが出る。それに、進んでしまった技術を後戻りさせることの方が難しいってこと、あるのよね」

 カナーンがジュリの肩を後ろからつかみ、「辛かったな、もうその辺でいいだろう。あとは私が――」と、振り向いたジュリに目配せをした。

 「とにかく、君にはミライと一緒に塔へ戻ってもらうよ。いまはそうすることで、評議員たちの心証を良くしておいた方が良いだろう。さあ、すぐにも用意してくれ」

 クンタはわかったと答えて部屋へ向かった。(つづく)



 

 
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テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

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