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風の丘のオカリナ

 交心

 赤煉瓦の建物を指して、あれが人々が集い別れて行く場所、東京駅だとミライが教えてくれた。

 すばるを出る前、一人いたクンタにジュリが、「私が孤独に耐えられなかったのがいけなかったの。結局、ミライに私の罪を背負わせたかたちになってしまった。あの娘には何の罪もないのに。だからお願い。あの娘を幸せにしてやって――。私、そのためなら何でもするつもりよ」と耳打ちした言葉がクンタの頭の中に残っていて、カナーンの運転する車が停止したことに気づかなかった。

 肩を揺さぶられて、クンタは横を向いた。ミライが心配そうな顔で見ていた。

 すまないと言って、クンタは車を降りた。

 「それじゃあ、ここで、あまり近いと穴が知られてしまうからな。大勢でいかない方がいいだろうし、遠くから見送らせてもらうよ」

 そう言うとカナーンは運転席から顔を引っ込めて車を発車させた。

 夜だというのに東京駅には人や車が見える。不夜城を目の前にして、やはりカリオの村とは違うなと感じた。

 「あそこの木、あれが穴のある場所の目印なの。じつはこっそり夜中に母たちがあの木を植えたのよ。穴に入る瞬間を駅側から見られないようにってことでね」

 薄暗くなった木の陰へ来ると、ミライはポケットから小型の機械を取り出した。

 「これ、リモコンなの。穴を元通りに修復する技術はないらしいんだけれど、ごまかすことはできるのね。穴の前に張ったスクリーンをこれで消して、塔側の入り口についている扉を開くためのものなの」

 丸い形をしたリモコンの赤いボタンと青いボタンをミライは続けて押した。

 目の前に階段が現れた。と思ったと同時にクンタは腕を引っ張られて狭い石の階段の上にミライと肩をぶつけるようにして立っていた。

 そこにはもう植え込みも木も夜空も見えない。

 ミライはふふと笑った。

 先に行くねと言って、クンタの手を引いて薄暗い中を螺旋階段を昇っていく。

 上までいって、螺旋階段の上から二番目の石を右に少しずらすと、上の石が動いて塔の真ん中階段に出た。そこは瓶が置かれたいたのだ、石の上に分厚い重そうな石の瓶がのっていた。

 「こりゃ分からないな」

 「そうでしょう」とミライは満足したように答えた。

 ミライの部屋へ入っていくと、二人はベッドに倒れ込んだ。

 疲れていたが、何故か眠くない。ミライと二人で暮らしていくということがはっきりしたためだ。カナーンを通してとはいえ、たがいの気持ちを確かめ、受け止めた。そのことがクンタを高揚させていた。

 ミライもうつぶせになっていたが、寝息は聞こえてこなかった。

 「眠った?」

 ミライは寝そべったまま、顔を上げた。

 「オカリナ、吹いてくれないか?」

 何故か急にオカリナの音色が聞きたくなったのだった。

 頷いて、ミライは机の引き出しからオカリナをとりだした。

 優しい音色だが、どこか悲しみの残ったその響きにクンタは心を動かされた。

 ミライを後ろから優しく肩を抱きしめた。(五章へつづく)

 
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テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

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