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風の丘のオカリナ

 帰郷

 草原の、草の匂い、風の感触、照りつける太陽、全てが懐かしく感じられた。

 春の間の数十日留守にしていただけなのに、一・二年振りに帰ってきたような気がする。

 クンタは、出たときとほとんど変わっていないカリオの村のようすに、なにかほっとするものを感じた。

 「あー、クンタにいちゃんだ」

 村の入り口で遊んでいた男の子がそう叫ぶと、村の奥に向かって、まるで獲物を捕って帰還したときのように騒ぎながら走っていく。

 あまり騒ぎ立てられても困るなと思いつつも、おかえりとみんなから声をかけられれば、気分は高揚するのだった。

 家の前へいくと、すでに誰かからの知らせが届いていたらしく、父と母が家の前で待っていて、クンタを見ると本当だと声を上げて喜びを露わにした。

 ひとしきり家族や近所のものたちの歓迎を受けて家へ入ろうとしたとき、取り巻きの人々の中にイタナの姿をみつけた。クンタは心が痛んだ。親どうしでの取り決めではあったが、村へ帰ったら婚姻のしたくをはじめるということになっていたのだ。彼女には、すでにミライと結婚していることを知らせねばなるまい。ただ、いまは、両親に一刻も早く近況を伝えることの方が先だった。

 クンタはそのまま家へ入っていった。

 お腹が空いたのではないか?風呂は?それとも少し眠るか?などと、家族は矢継ぎ早に尋ねてクンタを困らせた。

 「全て後回しでいい。それより、父さんと母さんに聞いてほしい話があるんだ」

 クンタは他の者に出ていってもらい、三人でクンタの部屋へ入った。

 クンタは、片耳を追いかけて行って、ミライに出合ったこと、ミライの両親のこと、片耳を倒したがつがいの熊のせいで頭までは持ち帰られなかったこと、時間旅行をして帰ってきたこと、ミライと結婚したことなどを、話してきかせた。

 ハルヒナも母も驚きの目をしたが、「いや、おまえが見たものを、私たちも信じる」と言ってくれたのだった。

 「だが、これからが大変だな」とハルヒナは思案したようすで、白いものが混じりはじめた顎の無精髭をさすった。

 「ミライって娘、会わせてちょうだい」

 母は突然の結婚に戸惑ったようすではあったが、嬉しそうに見えた。

 「イタナとのことを破棄せねばならないし、カナーンのことやその妻のジュリアのことも長老に話をして、ミライとの結婚も認めてもらわねばなるまい。やることは山ほどあるぞ」

 「はい。私もそのつもりで帰ったのですから」

 「早いほうが良い。今宵、長老の家を訪ねよう。それまで少し休むといい」

 「そうさせてもらいます」

 なごり惜しそうに離れようとしない母をハルヒナが引き離して、二人が部屋からでていくと、家へ帰ったという安心感からか、クンタは急に眠気を感じてベッドに潜り込んだ。(つづく)



 

 
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