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風の丘のオカリナ

 信頼

 「ジュリは普通のおばさんで、そのようなまやかしの術など、私は見たこともないし、本当とは思えません」

 未来を知りたいと思ったばかりに、人生を狂わせてしまった哀れな女、それがジュリの本性なのだと信じたかった。だが、言い切ったあとの不安感はぬぐいようがなかった。

 「監視する者、そのジュリという女、どちらかが偽りを申しておるのかの? いずれにしても、その女の正体が明らかになるまで、ミライと申す娘との婚儀も保留ということじゃ」

 「ミライは心根の優しい、よこしまな心とは無縁な娘であることを、私はこの目と心で見てきました。どうか、ミライとのこと、今ひとつお考えねがいたい」

 「――全てをあきらかにすることが先じゃの」

 「しかし――」といいかけたところで、ハルヒナに制せられて、クンタは引きずられるように長老の家を出るかたちになった。

 「これ以上、何を言っても無駄だ。長老の申されるとおり、真実を明かにすることが先だろう」

 ハルヒナにそう説得されて、クンタは諦めた。

 「明日にもここを立ちたい」

 「分かっておる。だが、――もし、ミライの母親が長老の申されたような女であれば、おまえもただではすまぬだろう。気をつけよ」

 クンタはそのような心配は全くないと言いたかったが、何も言わずに引き下がった。
 
 「私はイタナとの婚儀の件で話をしてくる。断れば、この婚儀、二度と成立しないが、それでよいのだな? 」

 「イタナは良き娘、良き妻となりましょう。ですが、私には妹のように可愛いだけ。妻はミライ以外には考えられません」

 ハルヒナはクンタの両の肩に手を置いて、頷いた。

 ユンマの姿をみつけたクンタは、ハルヒナとそこで別れた。

 見晴らしの良い、小高い丘の上に大岩があって、その上に腰掛けて空を見上げていたユンマに、クンタは下から声をかけた。

 はっと気づいたようにユンマが下へ目を向けた。

 彼の右目には革でできた眼帯があてがわれていたが、左の目は何の問題もないはずなのに、その目はうつろだった。

 「ユンマ、あの片耳の千切れた灰色熊を倒しました。仇をとりました」

 ユンマの顔色がさっと変わって、その左目が大きく見開かれた。

 すぐに横を向いてしまったユンマの肩が上下に揺れるのが見え、低い微かな慟哭が漏れ聞こえた。

 「いまでも、あなたは村一番の狩人です」

 そうクンタが言うと、ユンマは岩から飛び降り、クンタの胸を抱擁した。クンタの胸が暖かいもので濡れるのを感じた。クンタも目頭が熱くなるのを覚えた。(つづく)えっ、なに?
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テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

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