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風の丘のオカリナ

 月夜

 ユンマが久しぶりに話をしたと村人は口々に言った。ミライのことを思うと心が痛んだが、片耳を倒したことで、ユンマの心の中に変化がおこり、明るさを取り戻したことは、間違いなかったとクンタは思った。

 夕餉のあと、ハルヒナが外から戻ってきて、クンタを呼んで、家の前の木の下で、二人椅子に腰掛けて月をみた。その夜は満月でハルヒナの顔の輪郭までよく見えた。

 「イタナとのこと、分かってもらった。イタナはおまえのことを想い待っていたようだ。一人の女性の心を傷つけたことを忘れてはいけない」

 旅立つ前のイタナとの話で、彼女が父親どうしが決めた許嫁であるというだけでなく、クンタを本当に好いているのだと気づいたのだが、もしミライと出逢わなかったならば妻としていた娘だっただろうが、傾いてしまった気持ちというのはクンタ自信にも、どうしようもないことだった。

 「それでな、帰りにオルマさまの所へ寄った。カナーンが元気に暮らしていたと聞いて、お喜びだった。長老の話されたことは、オルマもその場にいて知っていたということだった。ジュリが連行されていく場面も目の前で見ていたそうだ。ただ――」

 ハルヒナはどう説明したら良いのか迷っているようすだった。

 だがクンタは敢えて言った。「塔に火をはなったのは誰か? ジュリはカリオの村の者がしたと言っていましたが、長老はそうではないと言われた――」

 「――そうだ。そこが私も引っ掛かっていた点だ」

 「ジュリを監視し、またミライをも監視している者を、私は見たことがあります。できれば彼らを生け捕りにして、追求してみたいと思っています。ただ、ミライの話では、彼らは高度な文明の世界からきた者たち、高度な機械や武器を操り、弓矢やナイフでは太刀打ちできないとのことでした」

 それを聞くとハルヒナは物思いに耽り、顎をしゃくった。

 「そうだ。まじないしの婆――」
 
 ぽんと手を叩いて、ハルヒナはクンタを見た。

 「幼きころ、聞いたことがある、人を多弁にする薬があると。――確か、お酒に混ぜれば全く気がつかないという話だったな」

 「そうか、それを飲ませれば……」

 クンタはハルヒナと顔を見合わせて笑った。

 「しかし、婆は最近、ちと、その、物忘れがひどくてな、それが心配だな」

 クンタは思わず自分の顔を叩いたが、どうにかするしかないと思った。

 「婆はもう寝ているだろうな。明日の朝早く、私も行こう」

 クンタは頷いて、丸い月を見上げた。(つづく)
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テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

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