スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

風の丘のオカリナ

 真実

 「七号さん、ここにジュリの家が建っていたころ、ここへ来たことがあるか? 」

 七号の向かいに腰掛けていたクンタが尋ねた。

 七号は黙秘したかったのかもしれないが、口が勝手に動こうとするためか、顔をゆがめた。「私はジュリの担当責任者だった。何度もここへきたさ」人を多弁にする薬には抗えなかったようだ。

 「火事の晩、おまえはこちらへ来ていたか? 」

 「来ていたさ。私が火を放ったのだからな」

 その場にいた一同が身を引き、嫌悪の表情を浮かべた。

 十九号が「私もいたわ。でも火を放ったことは知らなかった」と驚きの表情をみせた。

 「どうしてだ? 」

 クンタはきつく訊いた。

 「ジュリは勝手なことをしてこまる。流刑の身ながら、禁止されている異界のものを夫とし、しかも穴の存在やもう一つの世界のことまで知られてしまった。全て、私の責任になるのだからな」

 「――だからと言って……火をつけるというのは、いささか過激すぎるように思える。ジュリを抹殺するつもりだったとしか思えない」

 「ああ、そうさ。ジュリには死んで貰った方が良いと思った。私は本来ならこんな辺境の世界へ監視員としてまわされるような器の小さい人間ではないのだ。二三年の間、彼女の担当をしたら、そののちは管理職への道が約束されていた。末は頂点にたっすることさえできる存在だったのだ。ジュリのせいで、私の人生が狂わされてしまうことが、許せなかった」

 「おまえは、自分の出世のためにジュリを抹殺しようとしたのか? 」

 「カリオの者たちを煽ることで、ジュリを殺害してもらえれば、現地でのトラブルに巻き込まれての死、ということで、私の責任は軽くてすむと思った。だが、彼らはそうしなかった。私が火を放ったことについては、カリオの者がやったことととして処理できるようにするしかなかった」

 「――なんて自分勝手で、酷いやつなんだ」

 クンタは怒りで腕がわなわなと震えた。殴りたいと思った。だが、殴るのは自分ではない、ジュリなのだと気づき、気持ちを抑えた。

 「だいたい、流刑者に穴の管理をさせるなどというのが間違っている。さっさと死刑にしてしまえばよかったのさ。ジュリの父親は国際科学研究所の所長という役職にあって、下手なことができなかったために、こんな歪んだ求刑がなされた」

 「おまえがやったことは最低だ。どんな理由があれ、おまえの罪は深い」

 クンタが振り向くと皆が頷いてみせた。特にオルマは静かな表情の中に怒りの目を浮かべていた。

 「――そこでだ。俺はどうしても分からないことがある」
 
 とクンタは首を傾げて論点を変えた。

 「未来を知ること、それがどうしてそんなに重罪とされるのだ? 過去を変えてしまって未来に影響を与えるのを恐れるというのなら、わかる。だが、ジュリの場合は未来を見てしまったことへの刑だ。高度な技術を持った世界の未来が、いま俺たちがいる自然とともに生きる自給自足の世界というのも、何か引っ掛かる」

 七号の顔色が急に青ざめた。

 彼はあきらかに何かを知っていて隠しているとクンタは思った。(つづく)
スポンサーサイト

テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
プロフィール

きなこ

Author:きなこ
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。