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 過去・現在・未来

 あれから十八年クンタ黒い森の前にいた。

 クンタとミライは塔のあった崖とカリオの村のちょうど中間地に、家を建てて住んだ。

 十七歳になる息子はカリオの村の掟に従い、成人の儀式を終え、まもなく妻をむかえる。十二歳になるもミライに似て美しい娘に成長した。

 荒廃した崖地には、森から伸びた緑地が広がりつつある。

 何もかもがあっけなく終わったあの日、ジュリの決断したことをミライは黙って受け入れ、タイムマシンを森の湖に沈めることも承諾した。

 沈むタイムマシンをながめていたミライは、クンタの腕を強く握り、「母さんがひょっこりタイムマシンで姿を現すような気がする」と言った。

 クンタもそんな気がした。いや、いまでもそういう気がしている。

 ジュリの願いは叶ったのか?

 あれから、監視員が姿を現すことはない。

 ジュリの帰還を待つかのように、塔の焼け跡に小さな家を建てて、穴の監視を続けたカナーンは、去年カリオの村の墓地に埋葬された。

 クンタが引き継いで穴の管理をしているが、穴はあと七年ほどで、完全に閉じてしまうだろう。そして、五年後には人も通れなくなるだろう。

 カナーンは時々穴をくぐって東京にいっていたようだが、穴が閉じる前に、クンタは家族に聞かなければならないと思っている。

 こちらの世界を望むか、それとも東京を選ぶか?

 先に黒い森に入っていたミライがオカリナを吹き始めた。柔らかで、優しい音色だ。

 ミライにくっついていっていた娘が、お父さんお父さんと、声をはずませかけてくる。

 「――あのね、片方のお耳がない熊さんがね、いたんだって。お父さんにおしえてって、お母さんに頼まれたの」

 真っ赤な頬の少女は、クンタの腕を握ってぴょんぴょん跳ねた。

 片耳が生きていた。クンタは長年の心のつかえがおりたような気がした。
 
 あとから聞いたのたが、片耳はサーカス小屋から逃げ出して、東京からこちらの世界へやってきた熊だった。

 彼女はこちらの世界を望んだ。(おわり)

 

 

 
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